痴呆について




 痴呆は脳の病気ですから、痴呆を正しく理解するためには、先づ、脳の特徴を知らなくてはなりません。

1)頭の血のめぐり

 脳が働くのに必要なエネルギーは、ブドウ糖を原料とし酸素を利用して作られていますが、脳にはブドウ糖も酸素も貯えがありませんから、絶えず、補充され続けなければなりません。
 だから、頭への血のめぐりの善し悪しが、脳の働きを左右し、痴呆の経過を決定すると言っても過言ではございません。
 動脈硬化は、頭の血のめぐりを悪くしますから、血管性痴呆だけでなく、アルツハイマー病の発生と進行も促進します。
 自由で楽しく生きがい持って幸せに暮していますと、頭の血のめぐりは良いのですが、怒ったりゆううつですと、脳循環血量は低下します。

2)神経幹細胞

 今まで、脳の神経細胞は再生不能と考えられ、成人以後は毎日平均10万づつ減ってゆくと信じられていましたが、最近、成人の脳にも様々な脳の細胞に分化し、そして、増殖することのできる神経幹細胞が存在し、而も、この神経幹細胞からの神経細胞の発生とその生存は、様々な状況によって変動することも分かってきました。
 脳に障害が発生すると、防御反応として神経幹細胞からの神経細胞の新生が活発になりますし、自由に楽しく行動している時には神経細胞の発生は多いけれども、強制的に行動させられたりゆううつですと少くなります。
 また、神経幹細胞から発生した神経細胞は、様々なストレスが続いたり、或いは、刺激の少ない環境に置かれますと、間もなく死んでしまいます。

3)酸化ストレス

 私達が活動するのに必要なエネルギーは、酸素を利用して効率よく産生されていますが、使った酸素の数%は、活性酸素になります。
 活性酸素が大量に発生しているにもかかわらず、これを鎮めるために体内で作られている抗酸化酵素や食物として摂取される抗酸化物が足りないと、酸化ストレス状態になりまして、脂 質、蛋白質、遺伝子などが強力に変性させられて、痴呆、老化、動脈硬化、癌などが促進されます。
 脳の代謝は非常に活発ですからいつも大量の活性酸素が発生していますが、脳には活性酸素で傷害されやすい物質が多い上に、抗酸化酵素の中、カタラーゼは殆どありませんし、その他の抗酸化酵素も、加齢とともに弱くなってきます。
 従って、脳は酸化ストレスに最も弱い臓器でして、アルツハイマー病やパーキンソン病の発生には、酸化ストレスが大いに関与しております。

4)場所によって担当する働きが違う

脳  肝臓や膵臓は、どこをとっても全く同し働きしかしていませんが、脳は人間が進化をするとともにできてきた臓器ですから、場所によって担当する働きが違うと言う特徴を持っています。
 だから脳の病気では、障害された場所によって、出て来る症状も違ってきます。
 アルツハイマー病の病変は、側頭葉の内側面(もの忘れ)から始まって、側頭連合野(名詞 が思い出せない)から頭頂葉(場所が分からない)へ進み、それから、後頭葉(誰なのか分からない)や前頭葉(おもらし)へと一様に進みますから、現在出ている症状から、アルツハイマー病の病期を判断することができます。
 血管性痴呆は、前頭葉への血のめぐりが悪くなると発症しますから、前駆症状はすべて前頭葉症状(怒りっぽい、涙もろい、抑うつ、転びやすいなど)でして、おもらしも早くから出現します。
 血管性痴呆が発生してからの経過は、脳血管障害がどこに続発するかによって違ってきますから、全く千差万別です。
 病変が起った所の働きは悪くなっても、それ以外の場所の働きは残っていますから、まだらな呆け方になりますが、これも血管性痴呆の特徴です。
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